brooms/株式会社 グラムス 一級建築士事務所　建築実例詳細　　暮らしを主役に据えた シン...

　谷あいの地に立つ32坪４LDKの平屋。シンプルと言われれば、確かに建物としてはシンプルで飾らない。けれど、背後の林の生命力を豊かに膨らませる色彩を抑えた外観、その一部を切り取るオブジェのような四角い窓、シャープに整えられた巾木など、この家のここかしこに深い意図を感じる。隅々まで洗練され、それでいてつくり手の押しつけがましさを一切感じさせない潔さ。
　設計した一級建築士の岸本和久さんと施主のAさまは、旧知の仲。互いの人柄や感性を認め合ってきたこともあって、Aさまは多くを求めず、岸本さんもまた根掘り葉掘り聞きだすことなくその思いに応じた。「住み手がどんな暮らしを望んでいるか、その本質を突き詰めれば、デザインはおのずとシンプルになる。僕が気を付けたのは採光・通風やメンテナンス性の高さ、論拠の示せる構造耐力といった当たり前のことだけ。けれど結局それが、安心して快適に住み続けるために一番大事なことなんです」。あくまでも住む人の暮らし方から着想する。シンプルさは、いわばその結実としての姿なのだ。