株式会社 安藤工務店 安藤建築設計事務所　建築実例詳細　　簡素にして 上質な和の建築

　造作のソファに腰を下ろせば、正面の窓いっぱいに映るみずみずしい緑の庭。庭とともに目に入る建具は簡素でありながらも凛とした気品をたたえ、深い庇が窓辺に静かな陰影をつくる。まさに「庭屋一如」との言葉を体現した、日本の木造建築の美しさを教えてくれる家だ。
　広々とした敷地に、暮らしの場となる母屋と、趣味を楽しむ離れをL字に配置し、庭の飛び石でつなぐ。居間は落ち着きのあるナラ材の床に、スギ板の天井。現しになった梁はガラス欄間を貫いて外まで延び、その先に渡された桁が大庇をがっしりと受ける。一切ごまかしの利かない難しい造りは、設計者であり大工である安藤社長が、自ら何十枚もの納まり図を描き、膨大な数の木材に手刻みを施して組み上げたもの。梁と桁、柱と床などあらゆる木材同士がぴったりと合わさり、無駄のない構造美をつくり出している。縁側に腰掛け、四季折々の庭を肴に酒を楽しむときも、山を望む和室で静かに読書するときも、しみじみと上質を感じられる住まいとなった。