株式会社　カーサ・カレラ　建築実例詳細　　美しき原風景に　未来を刻む家

　北西には、若き日の父が親しんだ大きな池。ここに育ったＡさんにとっても、それは思い出の傍らにある原風景の一部だ。ただ、通勤に時間がかかり、幼い息子と過ごす時間が減ることを考えると、ここに建てることを少し躊躇もした。「カーサ・カレラ」からの提案で、時間を区切り土地探しをしてみることに。けれど決断の時、最後に選んだのはやはりこの地だった。暮らしを豊かにするのは何も時間だけではない。ロケーションの良さがもたらしてくれる心の潤いという点に気づいた時、池を望むこの土地がすでにあることへのありがたさを再認識した。蓮の葉を浮かべて陽光にきらめく池は清々しい朝の訪れを知らせ、まるで上質なシフォン生地を浮かべたかのような艶やかな夕暮れは慌ただしい日常をそっと忘れさせてくれる。日没とともに辺りの喧騒をすっかり飲み込んでしまう群青の水面は、夜になると深い静寂の上に宇宙の生命をくっきりと浮かび上がらせる。旧家ではただそこにあるだけだった背後の池は、いつの間にか、家の正面を彩る絶対的な風景画へと生まれ変わっていた。平屋であることも、大きかった。コンパクトな動線は家事の負担を減らして家族の時間を紡ぎだし、どこにいても伝わる我が子の気配に心は自然とほころんでいく。息子中心の暮らしはまだしばらく続く。けれどここならば、いずれ訪れる老年の未来にも憂いはない。その安らかさこそ、この家がもたらしてくれた最大の財産なのかもしれない。