株式会社　カーサ・カレラ　建築実例詳細　　潮騒と光が時を刻む海に開かれた家

　海辺に育ち、数キロ先の島までの遊泳もものともしないＯさんは、まさに“海の男”。慣れ親しんだ瀬戸内海はもちろん、休暇の折には海外のリゾートにも足を運ぶなど、その人生はいつも海とともにあった。そんなＯさんにとって、家づくりで最も重要なのは機能性や利便性よりも、ロケーションだった。生まれ育った両親の自宅の目と鼻の先に構えた住居は、玉野市の海岸線沿い。この上ないロケーションを最大限生かすため、暮らしの中心となるＬＤＫを２階に配すのに迷いはなかった。要は何といっても、ラッパ型に海へ向かって開かれた正面の大窓だ。穏やかで美しい瀬戸内海を、まるでプロジェクタースクリーンのようにのびのびと映し出し、大きなソファにどっしりと腰を沈めるとその存在感はよりいっそう増していく。そこで過ごす時間は潮騒によって刻まれ、時の経過は水面にきらめく陽光が教えてくれる。日々刻々と変わる水面の表情とともに暮らしの色も変化する、海辺のリゾートそのものだ。敷地の３分の１を愛車に譲った１階には、寝室や洗面など生活機能をすべて集約。２階の窓が海のためだとすれば、１階は星空を楽しむためのものだ。緻密な計算で配された丸窓の夜空は疲れた体を深い休息へと誘い、朝は柔らかな外光が心地よい目覚めをもたらしてくれる。自分らしく生きられる住まい―。それは、地利がもたらす清々しさと包容力を享受する場所のことなのかもしれない。