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初めての家づくりガイド 3 依頼先の種類と特徴

ハウスメーカー、工務店、建築家。それぞれの特徴を把握しておこう。

依頼先選びの選択肢は3つ

家づくりの依頼先は、ハウスメーカー、工務店、設計事務所と大きく3つに分けられます。それぞれ持ち味が異なるので、まず自分たちの希望する家づくりにどのタイプが適しているのかを判断することが必要です。依頼先選びのポイントは、イメージにあった設計・施工をしてくれるか、何でも相談できる信頼関係を築くことができるか、工事監理がきちんと行われる体制が整っているかなど。いずれにしても、相性のいい依頼先が見つけられれば、家づくりの半分以上は成功したも同然。そのための時間と労力を惜しまないことが大切です。

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広範囲に営業網を持つハウスメーカー

サービス体制

ハウスメーカーに共通するのは、一定の規模以上の生産設備をもち、家づくりを工業化することでコストダウンと品質の安定を実現した住宅会社であるということ。厳しい管理体制のなかで工場生産されるため、品質が均一で精度にバラつきがないのが大きな特徴です。専門のスタッフがオリジナルの住宅を商品として開発し、営業スタッフが販売するシステムになっています。一番の魅力は、家づくりに関するトータルなサービス体制。土地探しから商品選び、部材の規格、資金計画、設計、施工、そしてアフターケアに至るまで、家づくりのすべてに一貫したノウハウが確立されています。提携先の銀行を通した有利なローンの紹介や、面倒な書類作成の代行、内外装のコーディネートなどのサポート体制も整っています。全国各地の住宅展示場に建てられているモデルハウスで、各種のカタログが用意され、担当の営業マンが質問や相談に応じてくれます。

構造・工法

扱う構造・工法がある程度決まっているメーカー住宅。構造・工法は、住宅の性能や品質、プランの自由度、工事費といった面に大きく関わります。各メーカーはそれぞれの扱う構造・工法の長所を生かし、短所を補う努力をしているので、そういった点に注意して説明を聞いたり、またそのメーカーが得意とする工法や力を入れている商品提案に注目してみるのもよいでしょう。

営業システム

ハウスメーカーの営業システムは2パターン。ひとつは、ハウスメーカーが全国に営業所を置き、自社の営業スタッフが直接建て主と家づくりを進めていく「直接営業制」。もうひとつは、ハウスメーカーが販売代理店契約を結んだ会社が営業活動を行う「販売代理店制」です。この場合、建て主は契約時に必ずハウスメーカーとの直接契約なのか代理店との契約なのかを確認しておく必要があります。

依頼先の基本的な特徴

ハウスメーカー 工務店 設計事務所
特徴
  • ・設計・施工一貫ながら、家づくりの過程ごとに分業制
  • ・工場生産比率が高いため、工期が短く品質が安定している
  • ・設計から施工まで一貫した家づくり
  • ・地元工務店ならではの機動力と細やかな対応
  • ・設計と施工は完全分離。施工は工事請負契約を結んだ工務店が行う
  • ・豊かな発想で独自のプランを提案。工期は少なくとも1年程度
設計 会社の設計部門や協力事務所 工務店の設計者や協力事務所 設計契約を結んだ事務所の設計士とスタッフ
監理 会社の施工部門 工務店の監理担当者や現場監督 設計士自身
設計料 設計料という名目で請求する場合としない場合がある 工事費のなかに含まれている 総工事費の10~15%程度と定められている
情報収集 住宅雑誌、新聞広告、住宅展示場、カタログ、インターネットなど、情報を得やすいのが特徴。適切な情報をうまく活用し、自分の家づくりにあったハウスメーカーを見極めるのがポイント。 知人の紹介、電話帳などに加え、実際の物件を見て住んでいる人の話を聞いたり、工事中の現場をチェックする。また、各都道府県の建築指導担当部署では建設業者の登録台帳を閲覧できるので、業務経歴などを参考に。 住宅雑誌、住宅・建築専門誌、インターネット、オープンハウスなどを情報源に、気に入った家が見つかったら気軽に連絡を。実際に会って話をしたり、過去の作品を見せてもらうなど、焦らずじっくり探すことが大切。
プラン 基本的には規格化された住宅。フリープラン(自由設計)の場合も、そのメーカーの採用する構造・工法を前提としたプラン。 一般に、伝統的な木造在来軸組工法を得意とする会社が多い。建て主の希望にあわせた自由設計が主体なので、希望や条件を具体的に伝えることが大切。 100%オーダーメイド。敷地条件、予算、法規制など厳しい条件にも柔軟な対応が受けられる。ただし作風も考え方もさまざまなので、自分にあった設計士を見極めること。
家づくり成功
へのカギ
相談窓口である営業スタッフとの相性 工務店の規模にかかわらず施工の技術力 デザインや考え方の相性と、設計力、工事監理能力

ホームドクター的存在の工務店

地域密着

工務店というひとつのくくりのなかにも、棟梁ひとりだけのところから、総合住宅メーカーとしてリフォームから不動産販売まで多角的な展開を図っているところまで、その規模や形態は千差万別。基本的には地域に密着しているのが特徴です。何かあったときに迅速な対応が受けられる、建築後もメンテナンスについて気軽に相談できるなど、地元ならではのメリットがたくさんあります。設計から施工まで一貫した家づくりである点と、小回りが利くという点で、頼もしいホームドクターのような存在に。細やかなサービスを求める場合は、地元の工務店に注目してみましょう。

設計・施工一貫体制

工務店は一般的に技術力を基礎にしているので、施工がメインになり、技術の確かなところが多いといわれます。最近では、多様化するニーズに応えるために、新技術を導入して品質や性能の向上を図ったり、設計や提案にも力を入れるところが増えているようです。依頼先の判断基準はあくまでも経営内容。会社の規模よりも、内容や相談したときの誠実度を重視して。また工務店の場合、工事中の進行具合や工事内容をチェックする監理を、現場監督が行います。第三者の立場でチェックできる仕組みになっているかどうかを確認しておきましょう。

フランチャイズ

工務店には、フランチャイズに加盟しているところもあります。フランチャイズ制というのは、本部が商品開発、技術指導、広報宣伝などを行い、加盟店が営業、販売、設計、施工を担うというシステム。メリットは、本部がもつ商品開発力や品質の安定した部材が提供されるとともに、長年の実績と信用のある地元工務店によるきめ細かな対応が得られること。契約先となる工務店との間で保証制度などについてしっかり取り決めておくことが大切です。

個性的な設計を望むなら設計事務所

設計+工事監理

一級あるいは二級建築士の資格をもつ建築家が運営するのが設計事務所。多数のスタッフがいるところ、ひとりで運営しているところなど規模はさまざまです。設計事務所の仕事は基本的に、設計と工事監理。設計の段階で、建て主の希望や条件を聞き、基本設計、実施設計を行います。多くの場合、この段階で設計事務所との間に「設計・監理契約」が交わされます。その後設計事務所が、地域的条件や施工業者の得意分野などを見極めて、工務店を手配してくれるのが一般的。設計図面をもとに工務店から見積もりをとり、合意できたら建て主と施工業者との間で「工事請負契約」を結びます。工事中は、設計事務所が監理を行います。監理は建物の完成度を左右する重要な仕事。施工者とは独立した第三者的な立場から監理してくれる、心強い存在です。こうした一連の設計・監理業務に対して支払われる報酬が設計・監理料。一般的には総工事費の10~15%程度が目安になります。なお、家づくりの期間は余裕をもって、少なくとも一年程度みておきましょう。

設計力

設計事務所に依頼する最大のメリットは、自分の望みをかなえた個性的な家が実現すること。さまざまな条件をクリアして、快適に過ごせる家を提案してもらえます。変形敷地などの条件や限られた予算、構造・工法や素材などにこだわりがあるといった場合はとくに、設計事務所に依頼するとよいでしょう。

人間関係

建て主の希望を汲み取りながらも、素人では思いつかない豊かな発想でプランを提案してくれるのが設計事務所の最大の魅力。そのためには人間同士の濃い関係を築く必要があります。ライフスタイルや生き方、モノの考え方、趣味、センス、育ってきた環境、未来へのビジョンなどを語り合える仲になれなければ、決して満足する家はつくれません。パーソナルな部分で相性のいいことが絶対条件なのです。この人だ!と共感できる人が見つかるまで、根気強く探しましょう。

設計事務所との家づくり